本WEBサイトの紹介
本WEBサイトの孫子兵法は、孫子研究家/人間学研究家の横山成人の解釈を発表するものです。従来とは違った解釈が多々ありますので、「孫子」を学び、実際に活用する上で、参考にして頂けると幸いです。
本WEBサイトで紹介する「孫子」は、銀雀山漢墓の竹簡孫子を底本にしてります。
中國哲學書電子化計劃(翻訳:中国哲学テキスト電子プロジェクト)は、中国および外国の学者に中国古代から伝わる文書を提供するオンラインのオープン電子図書館として公開されております。中國哲學書電子化計劃に記載されている孫子を見ると、一般的に知られる現行孫子、もしくは竹簡孫子でさえも記述内容が違う箇所が認められます。本WEBサイトでは、孫子の最も古いバージョンにこだわって、研究をしております。
本WEBサイトのコンテンツ及び解釈を、無断での転用と転載することを固く禁じておりますので、ご利用をしたい方はご連絡をください。ご連絡を頂いた方には、コンテンツの利用、勉強会の開催、取材等は柔軟に対応いたします。
竹簡孫子とその研究意義
「孫子」は、約2500年、中国の春秋戦国時代に活躍した軍事思想家、孫武の著した書物です。世界最古、最高の戦略書と評されて、現代でも多くの軍人、政治家、ビジネスマン、経営者等の座右の書とされています。
底本とする「竹簡孫子」とは1972年4月に漢代のお墓から出土したもので紀元前134年から紀元前118年の間のものと推定されている孫子です。現在確認される最古のものになります。
いわゆる孫子は、現行孫子と竹簡孫子の2つの系統があり、現行孫子は、三国志の英雄曹操(155-220)が整理したものを土台に、さまざまな思想家や軍人が変更を加えながら、現代まで読み継がれているものです。(武経七書、宋本十一家注孫子などいくつか種類があります)竹簡孫子と比べると、表現や内容が変更されています。
大きな内容の違いに形篇の「攻めれば余有り」(現行孫子)と「守れば余り有り」(竹簡孫子)が有ります。現行孫子は、攻撃する側は戦力を集中させることができるとし、竹簡孫子は、防衛側が国力の消耗を防ぎ、戦力を充実させ、地形を活用できるとすることで、内容が全く違います。
孫子全文を読むと、竹簡孫子は、全文を通して整合性がとれますが、現行孫子は、各篇や章句がバラバラで、論理性が欠如しています。そして一般的に流布されている孫子の訳文は、1800年代、1900年に活躍した軍事専門家ものが土台になっており、書き下し文や漢文を読んで、自分で意味を再現しながら読むことができないものになっています。例えると計篇の五事の「法」の中に「主用」というものが出てきますが、軍事的な解釈は、兵站や物資の輸送ロジスティクスとされているものが有りますが、孫子においては「主」は君主の意味で使われているのがほとんどであり、普通に読むと、「君主が将軍や軍隊を用いること」が「主用」であると想像できます。しかし、従来は、「法」を、「法令」として、その構成要素である「曲制」「官道」「主用」をそれぞれ「組織編成」「命令系統、管理者の在り方」「輸送、兵站」というように解釈しているので、「主用」を君主による将軍や軍隊の運用とすると、整理されていたものが壊れてしまいます。
そこで私(横山成人)は「孫子」の理論体系を整理し直す研究に意義を見出し、従来の訳文や解釈を無視してゼロベースで解釈を作る研究を始めました。10回以上訳文を作り直し、作り直すたびに新しい解釈を発見しました。「主用」のような解釈の変更が100箇所以上ありますので、従来の孫子に慣れている方は違和感があるかもしれません。全体として内容の整合性がとれる理論体系が作ることができたことで、その研究を出版し、本WEBサイトで発表します。
陰陽理論と孫子
結論から申し上げると、「孫子」は、自然界の法則である「陰陽理論」を軍事・及び戦略をテーマに著した書物であると考えます。本研究は、そのような仮説を元にスタートし、その仮説を証明したのが本WEBサイトになります。このように考えると「孫子」は「陰陽理論」の使い方を体系的に教えてくれる書物であることがわかります。これまでの研究で「孫子」、道教の「老子」の思想と関連があるとされいますが、私は「易」、陰陽理論と合致するという説を提案したいと思います。
物事は、陰と陽の二元で作られるのは陰陽理論の基本です。。例えば、女性が「陰」、男性が「陽」というように分類できます。「孫子」に出てくる言葉では、弱、害、死、全、後、将、奇、形、虚が「陰」だとすると、強、利、生、破、先、主、正、勢、実が「陽」になります。これらは簡単なものですが、孫子には陰陽の対概念は多数存在して、陰陽の対概念の関係を意識しながら読むと、新しい解釈を見えてきます。
また陰陽には次の5つの性質があります。東洋医学などで知られる考え方です。「互根」「制約」「消長」「転化」「可分」があり、陰陽を有機的に合体することで生成発展する「中」の思想もあります。
このような陰陽の性質から、孫子の中で次のような陰陽の関係があると考えます。
1.陰と陽が同時に存在する関係
2.陰と陽が表裏、ひっくり返る関係
3.陰と陽の気の量的変化の関係
4.陰と陽の気の質的変化の関係
5.陰と陽が循環しながら変化するの関係
6.陰と陽が振り子のように押されたら押し返す関係
7.陰と陽が多重構造になっている関係(陰と陽はそれぞれさらに陰と陽に分解できる)
8.陰と陽が合体することで一つ上の次元に高まる関係(止揚)
この8つは、わかりやすいように整理したものですが、このような陰陽の関係がある全文の中で各所に存在しているのが「孫子」です。
孫子をはじめ中国兵法には、兵法の「奇」と兵法の「正」という考え方が出てきます。武経七書の一つ「李衛公問対」や孫武の子孫が著した「孫臏兵法」にその考えが出てきます。「孫子」を陰陽の知識で読むと、「奇」とは何か、「正」とは何かの謎を解くヒントがあります。
竹簡孫子の研究方法について
本書の研究方法は次になります。
1.従来の孫子を解釈に頼らずに、原文を頼りに、ゼロベースで解釈を作る
2.陰陽の性質に照らし合わせて書かれている内容を推察する
3.陰陽の対概念を探しながら読む。対概念になりそうな漢字を発見したら、その二つを陰陽の関係で読む解く
4.漢字は同じ意味で使われているように読む(例えば、「将」は将軍の意味でのみ使い、「もし」「まさに〜す」などの使い方しない)
5.漢字の意味は、本文の中で解説されて意味を使う(「勝」は相手に撃ち勝つ「勝利」と読むのではなく、本文の中にあるように「戦力を保全し抑止力を作った不戦の勝利」の意味で読む)
6.「字源」を使う(他の古典で使われ方を調べる)
7.何度も何度も原文を読む、自分で兵法理論を漢字で執筆するつもりで、表現を検討する。(なし、なかれの字にも「無」「无」「莫」「勿れ」「母れ」の使い分けがある、使われている箇所を読み比べて共通する解釈を探す)
など、何度も解釈を作り直すたびに、新しい読み方の仮説を加えながら、整合性のある解釈を探しました。
本WEBサイトでは、本研究の一部分を紹介しつつ、新しい解釈による現代訳を発表したいと思います。詳細について2025年春に出版予定の拙著「竹簡孫子研究 戦いの原理は 陽で陰を撃つ」をお読みください。